まっしぐらに自転車との距離が縮まって体が動かない。
あ……もう、
「……っ」
……あれ、……ぶつかんなか、
「んなとこでボーッとつったってんじゃねえよ!あぶねえなあ!!」
自転車にのったおじさんが心配で振り返ると、ものすごい声で怒鳴られて唖然とする。
「かすってない?」
頭上から降ってきた落ち着く声にホッとして顔をあげた。
わたしの肩を抱き寄せて助けてくれたのは、透だった。
ぶつかる寸前、くるんと体が回転したのを覚えている。
「う、うん」
感情の読めない顔で微笑む透に頷く。
すると私の肩を掴む手が、守るように後頭部に添えられた手がするりと離れていった。
「こ…………コトォォォォォぉぉぅぅ」
「どこも痛くない?!ごめんねっっわたしバレンタインなんかに浮かれてコトのこと考えられてなかった……っ守れなかったっ」
「てか……あのじじい許さない。ここ歩道ですけど。ちなみにここ自転車通行禁止の歩道ですが?危ないのはお前だろ……」
怖い顔でブツブツ言う実唯に激しくボディチェックをされ、ぎゅっと抱きつかれ、「うっ」と息が詰まる。
……こっちのほうが大事故


