俺から瞳、逸らさないでね





「っし!いざ出陣!」

「しゅつじん」



……なんでいんの


放課後。

門を抜けて歩道に入ったところで実唯が拳を掲げた。

そして隣には、それを真似する透。


なんで、なんでいるの。

いやちょっと来るかもって予感してたけど。



「ねねっ!透くんはなにあげる?何作るっ?なに買うっ?ああ楽しみだねっ」

「んー……どうしよっかなあ」

「わかる悩むよね」

「うん。なにが喜ぶかまだ詮索中だから」

「そっかぁ」



ううーん。……ヤバい。


ミユ気づいてない、よね。


……うん。あの子は言うまでぜったい気づかない。そういう子。いや、言っても気づかんかもしれん。……ヤバい。


すっかり仲を深めてしまったふたつの背中を見ていられなくなり目を逸らす。

そのとき視界の端で、シュンっと黒い影が動いた。

門を振り返っても、怪しい影は見当たらない。



「コトお!どしたの?しんどい?」

「……や、んーん」

「そ?……いこっ!」

「んう……」



……気の、せい……。


再び前を向いたその瞬間。


ーーチリンチリンッ!


ぼーっとしていたせいで気づけなかった。