新そよ風に乗って ① 〜夢先案内人〜


「はい。近い将来、エアバスの新規導入が各社共に見込まれています。その際の資金調達が出来ないとなると他社に遅れを取ることになり、即ち、それは顧客確保の目玉商品としての価値がなくなってしまいます。未確認情報ではありますが、新型機種の搭乗者数は従来型よりかなり多いとの事ですから、新規導入は燃料費等を考えましても利潤を追求するにはかなり不可欠な事柄だと考えられます。従いまして、この三年で前述しました内容や書類に記載させて頂きました事項なども踏まえ、私の計画案のそれ以上の削減遂行が望まれます」
勢いというのか、これが若さというものなのか。自分自身の行動と言動を冷静に振り返りながら、よくもここまで勢揃いした役員を前にして自らの意見を述べられたものだと、我ながら少し怖くなっていた。取り返しのつかない事をしたのか、会社のためを思って出た行動が、これからどうなるのかすらわからない。今度の自分の身の振り方を考えた方がよさそうな雰囲気が、まだ書類に目を通し続けている社長以下、押し黙った取締役の表情から推し量られた。
「この自販機の件、もう少し具体的に説明してくれないかな。これは、1基に1メーターという事なのかね?」
「はい。社内はもとより、空港内に於けます我が社のゲート付近に設置されている自販機会社から電気使用量を徴収するために、電気メーターを設置します。その検針につきましてはビル管理会社に委託してはどうかと思ってはおりますが、場合によっては庶務の管轄として社内処理をし、電力会社の基本料金に基づき試算して請求書発行は経理にて行うシステムにしてはどうかと思います」
「しかし、支店等入れれば膨大な数になるのでは?」
「労力を惜しんでいては、利益は望めない。時代は変わりつつあるのだよ」
社長……。
「そうだろう? 高橋君」