想像出来たシーンだった。取締役の中には、それぞれのグループ各社の社長を兼ねている人も居る。従って、親会社の傘下として守られているというアドバンテージを貰いながらの事業推進を行ってきたはずで、その今までの慣習がなくなり自力で運営するとなると、それは未知数の事であるため、何も好き好んで自ら棘の道への一歩を踏み出す社長など少ないだろう。
「一見、デメリットが多いように見えるが、どういうメリットがあるのかね?」
「社長。新人の戯言などに耳を傾けている時間などございません。まして、そんな戯れ言で我が社の軌道修正を図るなど聞くに足らず……」
「社の命運を賭けるのに、社長も新人もない。良い意見は取り入れる。かつて、天下りの象徴とまで言われ続けられた所以を一層するにふさわしい斬新な提案だとしたら君はどうする? 滅び行く二番煎じのマンモスジェットと揶揄され続けたいのか?」
「……」
「高橋君。続けてくれ」
「はい。独立採算制を取り子会社としての株式を市場公開します。その際、予め申し上げておきますが、初年度は本社も子会社も赤字決算となりますし、経常利益も下方修正をせざるを得なくなる可能性も大です」
リスクが多すぎるといった声が、あちらこちらから聞こえてきていた。
「しかしながら、その子会社が独立した後、本社グループの再編と統合をします。つまり、赤字路線の廃止と機種の変更及び売却をしながらスリム化を図るわけです」
「ほぉ……。スリム化を図った後に出るメリットは?」
「恐らく、数字的には二、三年は赤字が続く事は覚悟して頂きたいのですが、新生三カ年計画が終了すると同時に、今度は中期経営計画を実行します」
「中期経営計画?」
副社長の疑問符の付いた問い掛けに、頷きながらも書類を見ながら進行を続けた。
「はい。赤字路線の撤廃とともにその路線グループ社員は宙に浮くわけですが、その分、新規路線の拡大を図り、新たにアメリカの航空会社と国際線路線提携を結びます。航路確保が狙いなのですが、同時に新機種購入の際の足掛かり的な要素も含んでおります」
「新機種を導入すると?」


