「三カ年というのは、どういう意味かね?」
副社長の質問は、大枠のタイトルにあったようだった。
「はい。一年目は、今申し上げたような身近なものからの削減を目指します。二年目は、そこからステップアップし、会社全体のスリム化を図ります。そして三年目は、顧客に対するニーズを考え、リスクを減らしつつ、顧客対応の簡略化を目指します」
「その二年目の会社全体のスリム化というのは、一年目からは出来ないのか?」
経営手腕を問われる副社長としては、すぐにでも赤字を解消したいのだろう。
「一年目のカテゴリーが多いため、軌道に乗った時点での開始は可能ですが、何分、会社全体、社員の意識の改革も図らなければ成し得ない事でもありますので、私からは何とも申し上げられません」
一年目の削減計画を話し終えた頃には、取締役の目つきは当初とは明かに違っていた。自分達の人員削減をせず、会社の再建を図ろうという計画に興味津々といった体だった。
「一年目の計画はわかった。では、その二年目の会社全体のスリム化を図るというのは、どういうことかね?」
先走る副社長の問いに社長は制するでもなく、話を聞いてくれていた。
「はい。二年目の大枠としましては、子会社の独立採算制を取り、株式も切り離します」
この発案を言った途端、思いも寄らぬといった表情で一斉にざわめき始める。
「本気で、そんな事が出来ると思っているのか!」
血相を変えて立ち上がった取締役の怒号が、会議室内に響き渡っていた。


