新そよ風に乗って ① 〜夢先案内人〜


「高橋君。口を慎みたまえ。ここは役員会だぞ」
会社の再建を目指すのに役員も新入社員も関係ないはずなのだが、封建的体質がこの会社を駄目にした所以だと、この時察した。
「高橋君。聞かせてくれないか?君のその削減計画を」
「社長!」
「定兼部長。たとえ経理部長と言えども、部下である高橋君の上司である前に、私はこの会社の社長だ。削減計画を聞く権利はある。君に阻止される覚えはない」
「……」
「高橋君。始めてくれ」
「はい。それでは、お手元の今の資料の白紙ページを捲って頂けますでしょうか」
レジメを捲る音が会議室内に広がると、今朝出来た計画案の表題が目に止まったのか、各取締役の表情も様々だった。
「新生三カ年計画……」
一人の取締役が呟くように言ったのは、俺の計画案の名称だった。
「ご説明させて頂きますが、私個人的見解としましたは、人員削減は最終的な手段として取っておきたいと思っております。まず出来る事からということで、社員一丸となっての事業と致しまして、コピー用紙の削減を図るべく、各所属のコピー機にコピーカードカウンターを導入して一ヶ月の枚数制限を設け、無駄を省く計画を全社員にして頂きます。それと同時に空港内に於けます取引先業者の方々にもご協力頂き、その方々が使われるコピーに対しても、事前にコピーカードを購入して頂き、コピー用紙コストの削減を図ります。「コピー用紙ぐらいで、何が削減出来るというのかね?」
予想出来た質問内容だった。
「コピー用紙に掛かる予算が、年間どのぐらいかご存じでしょうか? 次ページにございます表をご覧になって頂ければおわかりの通り、想像以上のコストが掛かっております。コピー機がリースである事を除いても、コピー用紙に掛かる経費は膨大です。各支店に於いても同様です。削減出来るものは、まず足下からだと思います。コピーカードカウンター導入に掛かる費用に関しましても、約半年でペイ出来る計算です」