新そよ風に乗って ① 〜夢先案内人〜


「大幅な減収減益は避けられないというわけか……」
高田第一会計士の数字的要素の見解を発表した時点で、社長が天を仰ぐように言った言葉に、各取締役も肩を落としている。
「高田会計士の計画案を知りたいので、続けてくれたまえ」
「はい」
到底、これだけでは減収減益を食い止める案とは思えなかったが、文面通りの計画案を述べる。高田会計士の案はこうだった。人員削減=早期退職を募り、その一時的退職金は、赤字経営状態の子会社を吸収して行う。尚、その子会社社員のうち、管理職は親会社の1ランク下の管理職として再雇用し、他の社員は解雇とする。これでは一時的に赤字を抑えられたとしても、長期的に見れば減収減益を食い止める事は望めない。説明を終えて社長を見ると、目を閉じたまま腕を組んでいた。今しかないと思う。俺の削減計画案を話すには……。恐らく、相当反発を食らうだろう。新入社員が経営に口を挟むのだから。しかし、会社に迫り来る落日を手を拱いて見ているのは、たとえ新入社員だろうが、定年間際の社員だろうが思いは同じ。
「社長。お話がございます。私に少しお時間を頂けませんでしょうか」
「高橋君。何を言い出すんだ」
「私の削減計画案をお聞き頂けませんでしょうか」
言った途端、会議室の全取締役が一斉にこちらを向き、怪訝そうな表情を浮かべながら、それぞれに卑下する言葉を口にしていた。