「申し訳ない。また連絡する」
電話を切る間際の釈然としない彼女の声に、詳しく説明出来ないモヤモヤ感があったが、すぐにまた計算式をパソコン画面に入れながら、何年計画にするべきかを考えていた。そして、日曜の晩に、後はメーカーの機材投入に関する金額を月曜の朝に確認し、午後からの会議に備える事にして、束の間の睡眠を取ったのだった。
「それじゃ、高橋君。行こうか」
「はい。よろしくお願いします」
経理部長と一緒に大会議室に向かい、初めてそのドアを開けると、想像以上に広い会議室と重厚な調度品と、いかにも座り心地の良さそうな椅子に面食らってしまった。ここでいつもそうそうたるメンバーで会議が行われているのも頷ける。早めに会議室に到着していたため、入って来る社内報に載っていた取締役の画像そのままの顔ぶれと着席した前に置かれた名前を確認しながら社長の到着を待った。間もなく社長も到着し、役員経営会議が始まり、各所属の削減計画案を予め作成されていたレジメを通して聞きながら、やはり人員削減の方向に傾きつつある状況の中、最後に経理の数字的要素からの見解を発表する番となった。
「本日は、高田第一会計士が欠席のため、私、高橋が代わりにご説明させて頂きます」
経理のレジメのみ数字の記載があるため、社外秘はもとより、社内に於いても極秘事項でもある部分もあるので、当日、この場でレジメを配る事になっていた。そのレジメの一番最後のページに、一見わからぬよう、敢えて1ページ白紙のページをおいて忍ばせた自分の削減計画案。
「以上が、来年三月までの見込み収支金額となります


