新そよ風に乗って ① 〜夢先案内人〜


「篤士が、もっとお利口になったらね」
「じゃぁ、どうすればいいの?」
「そうねぇ……。篤士がトイレットペーパーを水に浸けて遊んだりする悪い悪戯をやめて、もっとお利口になればね」
「もうしないから」
前を歩いていた親子の会話を聞きながら、どの時代も子供のお小遣いアップのお願いは変わらないんだなと思ってしまう。トイレットペーパーを水に浸けるとは、また凄いな。
あっ……。トイレットペーパー……。無駄……。そうか!
犬の散歩をしながら頭の中では、先ほどの親子の会話から閃いた事が、どんどん枝分かれして広がっていっていて、家に帰って犬の足を洗いながらもまだそれは広がっていて、部屋に入るなり、すぐに机に向かってノートに走り書き留めながら、パソコン画面にも同時進行で取り纏め始めた。これなら年間1000万、空港に出入りしている取引先や業者にも協力してもらうとすると、その分で初期投資はすぐにペイ出来るだろう。もっとも、初期投資の段階で合い見積もりをメーカーから取る事を前提として……。広がりつつある展望の途中で、携帯が鳴っている事に気づいた。
「もしもし」
「もしもし、貴博さんですか?坂本です」
その電話は、彼女からだった。
「こんにちは」
「こ、こんにちは。あの……。今、話していても大丈夫ですか? メールじゃなくて、すみません。お休みだと思ったので、お電話してしまって」
「大丈夫だよ」