「そう。進行次第らしいけど、可能性大だから張り切ってね。豪華ゲストとの競演もあるし」
豪華ゲスト?
「さっ、着いた。下りて」
「はい」
何だか、いつになく気合いを入れて車から降りてスタジオに入ると、すでにもうスタッフが集合していて、その輪の中心に誰かが座っていた。
誰だろう?
「あっ、泉ちゃん。ちょっと、こっち来て」
「はい」
チーフに呼ばれて、急いで向かう。
「今日からというか、新年特大号からモデル復帰することになった方がいるから、紹介するよ」
すると、スタッフが脇に避けてくれたので、さっきは見えなかった輪の中心に座っていた人が姿を現した。
「よろしく」
嘘。
「ミサさん……」
何で?
何故、ミサさんが今、此処に?
結婚を機に、この世界から引退したと思っていた。私が前に席を置いていたモデルクラブの専属モデルだったミサさんは、結婚することが公になってからは事務所のホームページや冊子からも顔写真が消えていた。
だから、てっきり私はもう辞めてしまったのだと勝手に解釈していた。あの当時、事務所とミサさんとの間で、どういう契約になっていたかも知らなかったし。でも今回、ここに来たってことは……。
「どこかで、お会いしたことあったかしら?」
あまりにも私がミサさんを凝視していたので、不思議そうな顔でミサさんに問い掛けられてしまった。
「あっ、あの……。前に……事務所でご一緒させて頂いてました泉です」
ミサさんが今、どの事務所に居るかわからなかったので、同じ事務所でとは言えず、前のと言うのも変だったので、前に事務所でと言ってその場を凌いだ。
「そうだったの。ごめんなさい、覚えてなくて」
「いえ、そんな……」
夢のようだ。オーラがあって、遠くから見ているだけで精一杯だったのに。その雲の上のような人だったミサさんと、こうして直接話が出来るなんて。
「あなたが居た頃、他に誰が居た?」
エッ……。
「それは……」
「それじゃ、撮影始めます。よろしくお願いします」