言い掛けた俺の言葉を遮るように彼女が俺にお辞儀をすると、真っ先に中原のところに向かい、深々と頭を下げていた。
フッ……。ひとまず、一件落着か。
「さて。中原と矢島さんは、先に食事に行って来い」
「はい。矢島さん。行こう」
「えっ、でも来たばかりで……」
「いいから、行こう」
「は、はい」
「それじゃ、高橋さん。お願いします」
「いってらっしゃい」
机の上に置かれたメモを読みながら、今朝、俺に見せた彼女の泣き顔に、突然、別れを告げられて、哀しみと戸惑いを全身から溢れさせながら、その瞳から止めどもなくあふれ出る涙を拭うことすら忘れていた彼女がふと重なり、あの日のことが思い出されて胸を締め付けた。
彼女は今、どうしているのだろう。自ら別れを告げた俺がこんなことを思ったところで、もう、どうにもならないというのに……。