主計担当部長の嫌味とも取れる問い掛けが、俺に向けられる。
「そうですね。また、いずれ新規採用が出来るようになればいいのですが」
「そう言えば……高橋君は、随分、バレンタイン・デイに大量のチョコレートを女性陣から貰っていたようだが、まぁ、まだ新生三カ年計画の詳細も明らかになってなかった頃だし、まさかこんなに自分達に降り掛かってくるとは、女性陣も思っても見なかっただろう。来年のチョコレートの数は、今年の半分以下になるかもしれんな。ハッハッハ……」
最近は、こうした風当たりにも慣れてしまっていた。言いたい奴には、言わせておけばいい。そのひと言を俺に言って気が済むのなら、幾らでも聞く。きっと今回の俺の昇級も、面白くないのだろう。財務担当部長が、露骨な態度と言動に表しているのがよくわかる。
「一日から来る、この新入社員八名を、どのように配置しましょうか」
売掛金担当部長が、取締役でもある経理部長にお伺いを立てている。そんな席に何故、俺が出席しているのか。会計担当には部長が居ない。経理部長直轄という組織運営になっている。社長にお願いして、従来あった会計担当をなくして、会計監査という新たな担当を設けてもらった。今まで会計担当だった社員は、それぞれ主計や財務などに振り分けられ、余剰人員は転出させたので、人員的にはかなりマイナスになったのだが、新入社員の配属でその分は少し補われた。会計監査には、あと一人か二人貰えれば良いと申し出ると、ちょうど部内異動で宙に浮いた一人で、元々会計に居た二年目の男子をそのまま残してくれることになり、また担当部長も何処かの担当に付けてもらい、その分、管理職人件費を減らして欲しいと願い出たのも俺だったが、その代わりに俺が昇級してしまい、必然的にこうなってしまった。反感もかって当たり前の構図だ。
「主計と売掛金は、退職者の欠員が二人出ているので優先的に配置しますが、どの新入社員がいいですか」
こういう会議は長い。この時期、経理は忙しいのは周知の上なのに、こんなに流暢に会議を進めていていいのだろうか。部長が決めてくれれば良いとさえ、思ってしまうのだが……。