「夕食が終わったら、19時からまたここでミーティングを行いますので、ひとまず解散」
「ありがとうございました」
ざわざわと講義室から出て行くゼミのメンバーの後ろ姿を見ながら、ひとり疎外感を否めない俺は、そろそろこの波の中に自ら呑まれなければいけないと悟っていた。
どの道を進むべきか。否、どんな道を進んだら良いのかさえわからない。
ただ商学部に入ったからには、学部を活かせる分野に就職することが一番得策なことだけはわかっている。
「貴博、腹減ったな。とにかく今は飯だ、飯」
「そうだな」
仁。お前はもう、決まっているんだろう?仁が進みたい道があることは、俺にもわかる。
進みたいと思える道があることが、羨ましい。進まなければいけない俺はいったい……。

熱心な三年はすでに夕食の席からして四年の近くに陣取り、さながら四年の就職活動の即席講義を聞きながら食事をしていた。
「熱心だよなぁ。俺には無理だ」
「フッ……」
「何だよ。いきなり思い出し笑いとか、趣味悪いぞ」
今の気持ちが声になって出てしまったかと思えるぐらい、俺自身も仁の言葉通りのことを思っていたので、思わず笑ってしまっていた。
「いや、お前と同じことを思っていたからさ」
「なるほどね。良かったよ、同士がいてくれて」
「ハッ? いつから俺は、お前の同士になったんだ?」
「今からとか、どぉ?」
「……」
まったく仁と居ると、このままネガティブな就職活動も、ポジティブな就職活動になりそうだな。
夕食が終わり講義室に向かうと、先ほどの食堂での光景を見て学んだのだろう。多数の三年のゼミ生が、四年を囲んで熱心に四年の話に耳を傾けながら、しきりにノートを取っていた。
この場の雰囲気だけ見ると、一部のゼミ生を除いてまるで就職活動中の学生の集まりのようだな。一部のゼミ生に無論、仁と俺は入るのだが……。
「高橋君、合宿の帰り、一緒に車に乗せていってくれない?」
講義室の入り口に立っていた女の子二人のうちの一人が、席に着こうとしていた俺達に話しかけてきた。
「帰り?」
「そう。高橋君達、車で来たんでしょ?私達電車で来たから駅から遠くて雨も降ってたし、タクシーもなかなか来なくて大変だったのよ」
「そうだったんだ。今日は、寒かったよな」
「そうなのぉ」
強く同調するかのように、もう一人の女の子が相づちを打つ。
「ゴメン。俺達帰りに寄るところあるから、真っ直ぐ帰らないんだ。だから悪いんだけど他のヤツあたってくれる?」
仁?