昨日のアルコールのせいか、喉が渇いて仕方がない。空いてしまった紙コップを持って立ち上がり、コーヒーを注ごうと用意されたポットの注ぎ口のボタンを押そうとした人差し指を、誰かの左手が掴んだ。
「この雨は、恵みの雨だったわね。そんなに水分ばかり摂っていたら、顔の浮腫が酷くなるだけよ。このブレイク・タイムの間にその浮腫、何とかするのかと思って見ていたら、何?余計浮腫が酷くなるような水分ばかり摂ってどうするの?冷たいタオルで顔を冷やして、それで随分違……」
「ミサさんに、とやかく言われる覚えはないです。それに、どうせ今日は中止でしょ?」
貴博さんと、ウォーキングに行けるミサさんが羨ましい。貴博さんを奪い返されたミサさんの勝ち誇っているような態度が鼻について目障りだ。
「あのね。一日延びれば、その分経費も掛かるから、スタッフは極力その日のスケジュールはその日にすべてこなしてしまいたいの。それは当然のことなんだけれど、こんなご時世だから尚更そう願っているスタッフが多いのに、そんな不謹慎な言動を平気で言うのはやめた方がいいわ」
もういい加減にして欲しい。その先輩面するのも、貴博さんの彼女は私とばかりに自慢げな態度で接するのも……。爆発しそうな気持ちをぶちまけようと言葉を発しようとしたところに、スタッフが入ってきた。
「残念ながら、今日は中止です。この撮影は明日の朝、1時間繰り上げて始めますので、明日の朝は七時撮影スタートになりますからよろしくお願いします」
結局、撮影は中止になったので、その知らせを受けた周囲に居た人達の私語に流されるようにミサさんともそのまま別れ、夕方に予定していたボイストレーニングにマネージャーと共に向かった。
いつものように発声練習から始め、自分の課題曲とされている聞き覚えのある誰かが歌っていた曲を今日も歌う。すでに歌詞も覚えてしまっていたが間違えるとまた怒られるので、譜面を見ながら歌っていると、途中でトレーナーがピアノを弾くのをやめてしまった。
「腹式呼吸もまた忘れている発声だし、歌に心もこもっていない」
「この雨は、恵みの雨だったわね。そんなに水分ばかり摂っていたら、顔の浮腫が酷くなるだけよ。このブレイク・タイムの間にその浮腫、何とかするのかと思って見ていたら、何?余計浮腫が酷くなるような水分ばかり摂ってどうするの?冷たいタオルで顔を冷やして、それで随分違……」
「ミサさんに、とやかく言われる覚えはないです。それに、どうせ今日は中止でしょ?」
貴博さんと、ウォーキングに行けるミサさんが羨ましい。貴博さんを奪い返されたミサさんの勝ち誇っているような態度が鼻について目障りだ。
「あのね。一日延びれば、その分経費も掛かるから、スタッフは極力その日のスケジュールはその日にすべてこなしてしまいたいの。それは当然のことなんだけれど、こんなご時世だから尚更そう願っているスタッフが多いのに、そんな不謹慎な言動を平気で言うのはやめた方がいいわ」
もういい加減にして欲しい。その先輩面するのも、貴博さんの彼女は私とばかりに自慢げな態度で接するのも……。爆発しそうな気持ちをぶちまけようと言葉を発しようとしたところに、スタッフが入ってきた。
「残念ながら、今日は中止です。この撮影は明日の朝、1時間繰り上げて始めますので、明日の朝は七時撮影スタートになりますからよろしくお願いします」
結局、撮影は中止になったので、その知らせを受けた周囲に居た人達の私語に流されるようにミサさんともそのまま別れ、夕方に予定していたボイストレーニングにマネージャーと共に向かった。
いつものように発声練習から始め、自分の課題曲とされている聞き覚えのある誰かが歌っていた曲を今日も歌う。すでに歌詞も覚えてしまっていたが間違えるとまた怒られるので、譜面を見ながら歌っていると、途中でトレーナーがピアノを弾くのをやめてしまった。
「腹式呼吸もまた忘れている発声だし、歌に心もこもっていない」


