新そよ風に乗って ① 〜夢先案内人〜


13人目を数えた途端、安堵した気持ちと共に、複雑な思いが交錯した。こんな状態でこの先、最短の再建が目指せるのだろうか。俺一人で到底出来ることではないことぐらい、百も承知の上だが、これから山ほどある案件を提出、採択するのにどれだけの時間を有することになってしまうのかと一抹の不安を覚える。
「13人では割り切れません数字でしたので切り上げで換算しますと、14人の賛成が必要でしたな」
進行役の役員のひと言で、またも顔を見合わせながらざわめく役員を横目に高田さんがこちらを見て目が合うと、不敵な笑みを浮かべてた。微妙な人数だとは思っていたが、このままでは押し問答が続くだけで無駄な時間ばかりが過ぎていく。社長を見ると、拳を作った右手に顎をのせながら高田さんを見ているが、その表情からは余裕が感じられるのは何故だろう。全く動揺を見せていない。トップに立つ者の成せる技なのだろうか。
「賛成13人、反対17人。出席者の三分の二の同意を得られませんでしたので、よってこの議案は……」
「いやぁ、遅くなって済まないな」
「会長」
会長?
「真山会長……」
副社長の声に反応して、一斉に役員がドアの方を向いた。真山会長。入社式の時、壇上の一番上席に座っていた人物。全日本トラベル空輸代表取締役会長、真山昇。代表権のある会長職に就いているが、滅多に社には顔を出さないことでも有名だ。何故なら、世界中の支社を視察していて既存の就航路線の選択を築き上げた実績があり、新規開拓路線の発案に力を注いでいるからだと入社した当時、耳にしたことがあった。その会長が役員会議に顔を出すとは……。俺がこの役員会に顔を出すようになってから、まだ一度たりとも会長が出席した姿を見たことはない。さっきの高田さんの話からすれば、規程に定める事項が認められて役員会を欠席していたことになる。その会長が何故、今日は姿を現したのだろう。
「何かの採択をしていたのかね?」
「はい。ご覧になりますとおり、役員会に一平社員が出席しているという前代未聞のことが起きておりまして、役員協約に基づく規程に反しているのではとの意見が出ましたものですから議案として採択いたしましたところ、出席者20人中、賛成13人。反対7人で三分の二に当たります可決人数14人に達しませんでしたので、否決され……」