「会社再建を目指す目的で掲げた新生三カ年計画の一年目として、出足から足並みが揃わないとは……。その足並みを乱すような社員が居るとは思いたくないですが、内輪揉めなどしている場合ですか」
「内輪揉めではないです。規程違反しているか、いないかの確認をさせて頂きたいだけです」
敢えて高田さんの言動には触れずに発言するあたり、さすが専務だ。名指しして余計収集つかなくなってはとの配慮からだろう。高田さんの挑発にも涼しい顔をしている。それにしても、何故にここまで反対する要因とは何なのだろう? 社長と副社長との間にある凝りとは、やはり所謂、勢力争いなのか。副社長が社長の椅子を狙っているのは、露骨な態度からも想像に値する。その副社長に付いているのが高木さんで……。必然的に、俺は社長派ということになってしまうのだろうな。だが、その勢力争いをしたところで、会社が破綻してしまっては、元も子もないというもの。今は、目先のことに囚われてる場合じゃないだろうに。
「それじゃ、規程にもあるとおり、平社員の役員会出席と発言権があるかどうかの問題について、採決を取ったらどうでしょう。それこそが我が社の社訓にもある、クリーンでクリアな社内風土を目指す上で一番適切な選択肢だと思いますが、社長。如何でしょうか?」
副社長の、この自信に満ちた言い方がやけに気になった。勝算があるとしか思えない。水面下で動き、社長を辞任に追い込もうと一気に畳み掛けてきた感じだ。どの企業でもあるのだろう。こういった、対立関係を引き起こす派閥争いが。
「出席者の三分の二の賛成があれば可決と見なし、平社員の役員会出席と発言権を認めることとします」
三分の二……。出席者は20人だから、13人。否、割り切れない13.3人。切り捨て、切り上げによって変わってくる微妙なボーダーラインだ。改革反対派が7人は居ることは明白で、どちらともつかない役員も存在する。その採択を何故か役員の一人、副社長に側近のような役員が進行役を買って出ている。しかし、こうも平社員、平社員と連呼されると、肩身の狭い思いがするが、難所を乗り越えるには必ずついて回る宿命。勤続年数だけは、どうにもならない。そのリスクを背負っていたとしてもそれを帳消しに出来る能力を身につけることが、俺の目標でもあり課題でもあるのだから。
「それでは賛成の方は、挙手をお願い致します」


