「それ、どういう意味ですか?貴博さ……キャッ」
貴博さんが、たばこを持っていない右手でいきなり私の両顎を掴み、ほんの数秒前とは違う冷たい目でこちらを見ていた。
「その気になれば、俺も男だってことだ」
「……」
貴博さんの息が頬にかかるぐらい接近していて、ドキドキ心臓が高鳴っていくのが自分でもわかる。
「フッ……。自分の気持ちに、?はつかない方がいい。おやすみ」
?だなんて、心の底からそう思って……言った……はず。
貴博さん、私……。
本当に、心の底からそう思ってた?貴博さんの傍にいられるだけで、ただそれだけでいいと本当に思って私は言っていただろうか?
遠ざかる貴博さんの後ろ姿を見送りながら、自分の心を見透かされた思いで、今更遅いのに隠すように両手を胸に押し当てていた。