新そよ風に乗って ① 〜夢先案内人〜

不安定? 貴博さんの心が読めないって、何? 自然と出た思いを文字にしてみて、初めて自分の気持ちに気づいた。貴博さんの心が読めない私。不安定……。慌てて手帖を閉じ、これが今の自分の気持ちなのかと自覚した途端、胸に手を押し当てていた。
寝たような、寝ていないような、あまりよく眠れないまま朝を迎え、撮影現場に向かう車の中で仮眠を取ったが深くは眠れないため、やっと寝られそうになったところで現場に着いてしまった。今日は早朝、現場での撮影を終えた後、スタジオでの撮影も入っていて一日中場所を変えての仕事で夕方撮影スタジオを出ると、やっと冬至を迎えたばかりのまだ陽の短さから夕陽が西の空に沈む直前で、スタジオから見える少し離れた坂道を茜色に染めていた。斜陽を眺めていると、侘びしさを感じるとはこのことなのかな。一日の終わりを告げるような日没。昨日の自分の気持ちと重なって、唇を噛みしめている。
「泉ちゃん。ここに居たんだ。捜しちゃったよ」
「あっ、すみません。仕事終わったので、ちょっと息苦しくて外に出てました」
「ボーッとしてないで、ちょっとスタジオ戻って。大変なんだ」
「えっ? まだ仕事、残ってました?」
マネージャーの慌てぶりに仕事はとっくに終わったものと思っていたが、自信がなくなってきてしまった。しばし、静寂の中で夕陽が沈む遠くを眺めていたりしたものだから、それこそボーッとしていた分、マネージャーの次の一言は、昨日からの寝不足など吹っ飛んでしまうぐらい衝撃的な言葉だった。