新そよ風に乗って ① 〜夢先案内人〜


赤と白を一応用意したワインだったが、貴博さんは白を選んでワインオープナーでコルクを抜くと、先に私のグラスに注いでくれた。
「あの……」
貴博さんに注ごうとして手を伸ばしたが、それを軽く制した貴博さんは自分でグラスにワインを注いだ。
「Merry Cristmas」
静かにグラスを合わせ、乾杯をする。もっと派手な感じのホームパーティーなら、何度も体験したことはあったが、こんなに静かな、しかも自分の部屋で貴博さんと……。
「食べよう。お腹空いたな」
「はい」
貴博さんが作ってくれたといっていい、チキンと水菜の料理を頂く。貴博さんが作ってたからかな。本当に簡単そうに見えたけど。
「美味しい!貴博さん。これ本当に美味しいです」
「そう。良かった」
感情の起伏をあまり表情に表さない貴博さんだが、嬉しそうに微笑んでくれた、それがわかったことがまた嬉しく思う。
「でもこのドレッシングの配分がわからないんですけど、オリーブオイルとかどれぐらい入れればいいんですか?」
「配分?雰囲気で、適当に入れてるから」
また雰囲気なの?それじゃ、全然参考ならないのに……。
しかし貴博さんを前にしてしまうと、今はそれよりも一緒に食事を二人だけで出来る喜びが勝って胸がいっぱいになりながらも、自分が作ったサラダも食べてもらい、「美味しい」と言って貰えて大満足のまま、食後のコーヒーと甘い物が好きかどうかはわからなかったが、一応ケーキを買ってあったのでそれを出すと、殊の外、貴博さんは喜んでくれた。
「もしかして、貴博さんはケーキとか食べられないかもしてないと思って、小さめのケーキにしたんですけど……」
「俺、甘党小僧だもん」
はい? 甘党小僧って、貴博さん……。
思いの外、貴博さんが甘い物が好きだったと知って、あっという間に5号サイズのホールケーキもなくなってしまい、コーヒーを飲みながら最近どんな撮影をしたかなどを貴博さんに話していると、貴博さんがバッグを膝の上に置いた。ファスナーを開くとチラッと会社の書類らしきものが中からのぞいていたが、貴博さんがバッグの中から一つの包装紙に包まれた長方形のものを取り出すとまたバッグを床に置くと、その包装紙に包まれたものを私に差し出した。