電話の切れる音を耳で確認してから画面を閉じる。余韻に浸るどころか、まだ心臓の鼓動が速くて携帯を握っていた手に汗をかいていた。貴博さんとクリスマス・イヴを過ごせる。街に流れているクリスマスソングが虚しく聞こえて一人取り残されたようだったが、一気に自分もクリスマスムードいっぱいの街に溶け込めそうだ。だけど……。貴博さんが部屋に来るってことは……あっ、「多分、もの凄くお腹空いてると思うからよろしく」とも言っていたから、食事もするって事?何処かに食べに行くという雰囲気じゃなかったもの。どうしよう、何を作ったらいいのかわからない。それに、貴博さんの好き嫌いも知らない。貴博さんのこと、私、何も知らないんだ……。だが、落ち込んでもいられない。すでに今日は20日。あと4日に迫ったクリスマス・イヴの献立を考えなければいけないのに、明日は仕事が入っているからもう寝なきゃいけない。寝不足はすぐに肌に表れメイクさん泣かせになってしまうし、自分の表情にも精彩を欠く気がするので、仕事の前日は8時間睡眠を心掛けている。だが、今夜はすぐには眠りに就けない気がした。貴博さんとの電話での会話を思い出すたびに、キュッと胸が締め付けられるようで、そしてそれは心地よいジェットコースター気分を味わえていた。明日の仕事の帰りに本屋に寄って、クリスマスの献立レシピの載った本でも買って見てみよう。背伸びはせず、自分の出来る範囲のもてなしを貴博さんにしたい。美味しいと言って貰える飾らない料理を作ろう。飾らない本当の自分を見て貰うためにも……。
そんな飾らない自分を見て貰いたいなどと、体裁の良い理屈付けをしてみたが、実際、本当に料理はあまり得意ではないので、自分の度量の限界というものはすぐに訪れてしまい、女としての不甲斐なさをまざまざとさらけ出す結果となりそうな24日の夕方から、今夜貴博さんと一緒に食べる料理を始めた。付け合わせのサラダは上手く出来上がったが、自分でチキンを焼くことは断念して、もしもの時と思って買い込んであった鶏肉を切って冷めても美味しいチキンはチキンでも、チキンの唐揚げを作ろうと仕切り直しをしようと思い、ふと時計を見るとすでに20時を過ぎている。大変、急がなきゃ……。幸い、貴博さんからまだ連絡も来ていなかったので、気持ちを落ち着けるためにトイレに行き、また新たにキッチンに向かおうとした時、ちょうどインターホンが鳴った。


