エッ……。
もしかして掛かってるの?もう掛かっちゃった?
「も、もしもし?」
「フッ……。大丈夫だ。そんなに慌てなくても聞こえてる。こんばんは」
「貴博さん! な、何で今、電話に出てくれなかったんですか? もう私、焦っちゃって……」
「ん? 俺から掛けたかったから」
はい?
「あの……」
「俺が君に用事があったから、俺から掛けたかったんだもん」
貴博さん……。
予想外の貴博さんの言いように、呆気にとられたのと同時に貴博さんの可愛い一面が見られて思わず携帯越しの貴博さんの表情を想像しながら微笑んでしまった。
「年末に向けて、仕事も忙しい?」
「そうですね。でも春物の撮りはだいたい終盤を迎えているので、少し落ち着いてきました」
厳寒の真冬の早朝、薄手の春物の服を着ての外での撮影は本当に堪えるが、最近はそれも仕事と割り切れるようになり、その一時の寒さも空気の冷たさ以上のスタッフの人達の熱気と共に集中出来る自分が居て、不思議とカメラのレンズを向けられると寒さなど忘れてしまう。
「そう。23……いや、24日は仕事?」
「24日ですか? 24日は、入ってません」
即答出来てしまう自分は、少しだけ恥ずかしかった。何故なら、貴博さんともしかしたら逢えるかもしれないという僅かな望みを抱いて、その日のスケジュールが入らないようドキドキしながらこの一ヶ月を過ごしていたから。スケジュールが入らなかったところで逢えるとも限らないのに、その執着心の強さにもここ最近、自分で自分に驚いてもいた。


