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𓐍
𓈒
世界の終わりを見た。
終わった。
パパ、ママ、ごめんなさい。
茉冬の命はもって、あと数秒のようです。
「っ、ごめんなさいすみません申し訳ございません、なんとお詫びしたらいいかわからないのですが、ええと、どうか命だけは……!」
ぺこぺことお辞儀を繰り返したあと、これじゃあきっと足りない、と制服のスカートが汚れるのもいとわずに膝をついてびたーん、と華麗な土下座を決めた。
貧弱なボキャブラリーとジェスチャーの限りを尽くして、ありとあらゆる方法で謝罪するわたし。
そんなわたしに、ワサビみたいなつーんとした鋭い目が向けられる。
ひゅっと思わず息をのんだ。
やっぱり、わたしの命日は今日になるんだ。
パパ、ママ、今まで大切に育ててくれてありがとう。
先にあの世に逝く親不孝をどうか許してください、今から茉冬は、きっとこの人────吉良くんに殺されます。
悪いのはわたしだもん、自業自得だもん、この罪は命をもって償います……なんて、半べそをかきながら、吉良くんの口に入って “しまった” からあげをじっと見つめる。
うう、せめて。
せめて、はじめて塩麹を使ってみた今日のからあげの出来栄えだけでも確かめたかったんだけど、と現世に未練たらたらのわたしの目の前で。
「えっ」
吉良くんが、咀嚼した。
からあげが、消えた。
それから。
「何これ、美味」
“あの” 吉良くんが、ふにゃっと甘い顔をして笑った。
────から。
とんでもなくおかしな夢を見ているんだなわたしは、と思った。