ダレル様はきっと、自分に対して怒っている。

しかし自分の責任もある、とヴェロニカはぐっと唇を噛む。

もっと強く安静を言い聞かせれば良かった。

誰もヴェロニカを責めたりはしないけれど。

あたしさえちゃんとやっていれば、こんなシナリオはきっと未然に防げていた。

そんな思いを拭えなかった。


ギリッと歯ぎしりをしたのに気づいているのかいないのか、ダレル様は何も言わず、あたしの横を抜け、ドアノブに手をかけた。


扉を開けようとする一瞬手前、ノブは逃げ、向こうからダリア様が顔を出した。


「ねえ、花瓶はどこにあるか知っていて?」


手には、この季節には咲かないはずの橙色のポピーとディモルフォセカという花があった。


「ああ、戸棚の下から二段目に入っていたと思う」

「あたしが出します」


そう言いヴェロニカも部屋に入る。

ダレル様は眠る少女のもとへ真っ直ぐに向かい、ダリア様は戸棚に向かうあたしについて来る。