次に目を覚ました時、部屋には誰もいなかった。
ゆっくりと体を起こし、部屋を見回す。
ここはどこだろう、彼は誰?
わかるはずもないのに、いつもは気にならない、気にしないはずなのに。
私に優しいあの青年が気になる。
優しさの目的が気になる。
大きな窓から外をぼんやりと眺めながら、髪を鼻に押し付ける。
髪のにおいを確かめるのは、昔からの癖だ。
不安な時についやってしまう。
深呼吸を繰り返していると、扉が開き背の高い女の人が入ってきた。
手には何やら物がたくさん乗せられたトレーを持っている。
私を見ると目を輝かせ、そばにあった背の低い棚の上にトレーを置き、部屋を飛び出していった。