心を開いてくれたことに気を良くして、いじらしさが愛しくなって。


公務の休憩時間やふとした瞬間にはあの娘に何の話をしようか、と常に考えるようになっていった。

興味を持たれると少し怯えるため、使用人達には、あまり気に掛けるようなそぶりはせずに接することと、興味本位で話しかけないように言い渡した。


紛れもない自分自身が好奇心で拾ったというのに。


そして彼女がついに。


『私、昔はお母さまからナタリーって呼ばれてたんです』


私がペンを置くと、おずおずとそれを取って書き込んだ。

顔を微かに赤らめた彼女の、最初のおねだりは、呼び名だった。







ベッドの上であの時の記憶が(よみがえ)り、抱きしめたい衝動に駆られた。


あの時も今も、同じようにぐっと堪える。