隣ですやすやと眠る彼女の寝顔を眺めながら、思う。


この子の甘い血の香りが気になってきたのは、きっと気のせいではない。

ナタリーには言わなかったが、ヴァンパイアは弱っているときと相手欲情しているときは、大人になってもその血を吸いたくなる。

もちろん、誰彼構わず血を求める亡者もいるが。


部屋を同じにして良かった、と心の底から思う。

城の改装は使用人の棟で、部屋も十分すぎるほど余っていた。


我ながら汚い手だとは思ったが、それでも彼女の隣で──彼女を隣に置いて──寝るのか。

体調が回復したらどこかへ行ってしまうのではないかと、ずっと心配がついて回るからだった。


いつも目覚めるたび、辺りを見回し、日中はいつも周りの様子を伺い警戒しながら生きているそうだ。

毎日、ずっと、何かに怯えている。


艶を取り戻した栗色の髪に、潤った小さな唇。

少しはふっくらしてきた、でもまだ痩せたままの白い頬。

小さな手で、一生懸命ペンを動かし日記を書く姿を思い出し、愛おしくなる。


なぜか放っておけなかった彼女は、風呂に入れまともな服を着せると。

それはそれは息を飲むほどの美しい少女だった。

まだ健康そうには見えないが、少しずつ体力はついてきたようだ。


ナタリーはここに来た時、ひどく弱っていた。

青白い顔、紫色の唇、やせた手足。
ドレスの膝あたりには血が滲んだ痕があった。