『私、昔はお母さまにナタリーって呼ばれてたんです。だから』
そこで、ハッと我に返った。
自分がやろうとしたことに気づいて、何とも言えない恥ずかしさに襲われる。
無意識に髪を握り鼻に持っていく。
でもやっぱり、ダレル様にはお見通しだった。
少し目を見開いて、そしてこちらを見て微笑む。
侍女のお陰ですっかり艶やかになった髪を撫でられ、ナターリアは安らぎを覚えた。
あなたにもそう呼んでほしい────
ここに慣れてきたナターリアが初めて欲したのは、懐かしい呼び名だった。
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