凍えるほど寒い中、ナターリアは燃えるように熱い体を引きずりながら歩いていた。


辺りは真っ暗。でも遠くのほうに、水面(かわも)が揺らめいているような淡い光がある。

そのかすかな光を求め、よろよろと足を前に出す。

ぬかるんだ地面に足がもつれる。


「うっ......」


バランスをとろうとするが体は重力に逆らえず、こけてしまった。

か細い膝に血が滲む。


力の入らない体をやっとのことで起こし、顔を上げる。


前方に見えていたはず光が消えていた。

ナターリアはハッとして辺りを見回す。


背後に、扉があった。



正確には扉ではない。

金色のドアノブだけが、ぼんやりと浮かんでいた。


この暗闇から抜け出せるかもしれない。

そう思ったナターリアは、渾身の力を振り絞りノブを掴み立ち上がった。


おそるおそる押してみる。──動かない。

引いてみる。



まぶしい光に目がくらんだ。