『あたし、ヴェロニカといいます。世話係となるので、何なりとお申し付けください。
今ナターリア様が召されている服も、あたしのです。
服を誂えるまで、粗末なものですが、ご容赦を』
持ってきた服は ”粗末” とはかけ離れていた。
装飾はないが、上質な布で織られていると一目で分かる立派なドレスだった。
行方知れずの何年も着続けた自分で縫い上げた麻の薄っぺらい服。
それこそが、“粗末” なのだ。
『今日は、ダリア様と口話のレッスンと、ドレスの採寸があります』
読み終え、視線を上げると、ぎこちない微笑みを浮かべる彼女と目が合った。
彼女が持っていた羊皮紙を手に取り、羽根ペンを走らせる。
すると、インクはさっきとは打って変わって金色に変わった。
ぎょっとして手を止めると。
黄金色のインク染みができてしまう。