落ち着きをすっかり取り戻した見習い魔術師は、窓を割った自分にショックを受けるナターリアを見て楽しそうに軽く笑った。


そして。

こんな状況で、ナターリアの心の中にはもう一つの欲が生まれたようだった。


《今は、お茶の時間だから、忙しくないと思うよ》


気づいたヴェロニカは優しくそう言ってナターリアの上着の襟を整え、軽々と抱え上げた。


首にしっかりと捕まり、いつもより高い視界に怖気づく。

でも何も見えない方が怖かったから、肩からそっと顔を覗かせる。

大きめの歩幅は薄明るい広い廊下を抜けると、もっとずっと広い廊下に出た。


先ほどより装飾が豪奢になったのも相まって、迷路のようで、目が疲れて頭がくらくらした。




やがて一つの扉の前で足が止まった。