それでも。

母を恨むことはあっても、嫌いになることはなかった。


優しくて、自由で、愛情深くて、無責任。


どうしてこんなに矛盾しているのだろう。

そう思った時もあった。


でも、心の中の母親以外、頼れるものなどなかった。



無意識に指先にぐっと力が入る。

そして気づく。


またしても、温かい何かが触れていることに。


手と、唇に......