-春子サイド-
それから、叶人君に毎日お弁当を
つくる謎の日々が始まった。
初めはちょっとめんどくさかったけど
叶人君はいつも美味しい、美味しい
とたべてくれるから、それが嬉しくて。
気づけば毎日ルンルンでお弁当を
作った。
叶人君はお弁当を持って行くと
いつもドリンクをくれた。
紅茶だったり、炭酸ジュースだったり。
お菓子もくれたりして。
叶人君は頭がいいから、考査前に
勉強を教えてもらったりした。
そんなことを半年以上していたら
叶人君のことが好きになっていた。
後、10日ほどでバレンタイン。
前回のバレンタインがフラッシュバックする。
今回渡すのをやめようかと持ったけど
きっと叶人君なら、好きじゃなくても
受け取ってくれると思ってチョコを
作る予定をたてた。
今回はチョコムース。
受け取ってくれるだろうか...
心を込めて一生懸命作る。
「どうか気持ちが届きますように」
そして当日、お弁当を渡すときに
放課後中庭に来てほしいことを伝えた。
放課後までドキドキで、授業なんて
頭に入ってこなかった。
放課後になると叶人君がいた。
叶人君の手には包んだチョコレート
が握られていた。
あ...
わたし以外にチョコを渡す人がいて、
その子のチョコ受け取ったんだ。
それを察した瞬間泣きたくなった。
涙声になりながら、
「今日バレンタインだからあげるね。
それじゃ」
私はチョコムースを押し付けるように
渡してその場から去ろうとした。
そんな時、叶人君に手首を掴まれた。
「離して」
「嫌だ。離さない」
「なんでよ!」
「春子、絶対勘違いしてる」
「勘違いなんかしてないよ」
「このチョコ他のやつから
もらったと思ってるだろ?」
ギクッ
私は心の内を当てられて焦った。
もういいやと自暴自棄になった
思った私は
「そうだよ!
去年のバレンタインから叶人君の
ことが好きで告白しようとしたのに
すでにチョコもらってるんだもん!」
こんなの叶人君からしたら
八つ当たりでしかない。
全てを言い終わった私は泣いてしまった。
去年も今年も馬鹿みたい。
叶人君の前で泣いて恥ずかしいし。
「泣くなよ、春子」
叶人君が心配した顔でこっちをみてきた。
「ごめんね、変なこと言って。
それじゃ。」
今度こそ去ろうとしたとき、
「雨宮春子さん‼︎」
叶人君が突然大きな声で私を呼んだ。
顔を赤くしながら、叶人君は続きを
話し始めた。
「高校一年生の時からずっと好きでした!
春子はきっと覚えてないだろうけど
一目惚れして、ずっとずっと好きでした。
俺は、兄貴みたいに頭良くないし
ちゃらんぽらんに見えるけど、
春子を思う気持ちだけは誰にも負けません!
だから、俺と付き合ってください」
叶人君の元にあったチョコは私に
向けられた。
「えっ?どう言うこと?
他の子から貰ったやつじゃないの?」
「ちげぇよ。
春子がいるのに他のやつからチョコ
もらえるかよ。
春子俺が弁解する余地も与えて
くれねぇんだもん笑」
「それはごめん。
でも今日バレンタインだよ?」
「バレンタインは好きな奴に思いを
伝える日だろ?
別に男からあげてもいいじゃんか」
「ホワイトデーもあるよ?」
すると叶人君はそぽを向きながら
「あーもうっ!!
本当はホワイトデーまで、
思いを我慢しとくのできなかったんだよ!
言わせんなよ、バカ..,///」
そんなこと言われたら胸のドキドキ
収まんないよ‼︎
ただでさえ、告白されてドキドキなのに...!
「それで告白の返事は?
すでに聞いちゃったようなもんだけど
ちゃんと聞きたい」
叶人君はいつにも増して
真剣な顔をしていた。
私が答えるまで数秒間があった。
すでに決まっている答えを、私は叶人君に
つげた。
「嵐 叶人さん‼︎
私もあなたのことが大好きです!」
私がつげた瞬間、叶人君は私に
抱きついてきた。
「叶人君、ここ中庭...///
人来ちゃうよ...」
「そんなことどうでもいいね。
そんなことよりこの幸せを味わいたい」
叶人君はしばらく私から離れなかった。
「春子、これから改めてよろしくな」
「こちらこそよろしくね」
夕暮れ時の空が赤くなり出した頃に
二人は目を合わせて、笑った。
この二人が今も幸せに過ごしているかは
また別のお話。

