「晴夏、中3の2月にインフルで休んでたことあったよな」


南にそういわれて、晴夏はバレンタイン前日に高熱を出し、14日に
インフル判定を受けたことを思い出した。でもあの男の話をしている
時にどうしてこんな話を南がするのかわからず、晴夏は小さく頷いて
南の次の言葉を待った。


「14日にアイツ学校まで来たんだよ、お前に会いに」


「学校に...?」


「あの子何ちゃんだっけ、中3のとき晴夏が仲良かった」


「麻友ちゃん?」


「あーそうそう、その麻友ちゃんが俺のところに来て『晴夏に付きま
とってる高校生が学校の前まで来てる』って教えてくれたんだ」


麻友ちゃんという友達は、自分がその男と晴夏が出会うきっかけを
作ってしまったことを悔やんでいて、晴夏が普段から仲良くしている
南に助けを求めたのだ。


「その時に顔を合わせたから、お互いに覚えてたってこと」


「...知らなかった」


晴夏は座ったまま下を向いた。南だけでなく、麻友ちゃんも晴夏に
心配かけないようにと黙っていてくれた。


「お前は友達に恵まれてるよ。いい子ばっかじゃん、麻友ちゃんも
あかりも」


うん、と今度は大きく頷いて、やっと晴夏は笑顔を見せた。
いつもの晴夏ならお前もな、とでもいいそうなものだったが、今日は
南を茶化すこともせず、素直にその言葉を受け取っていた。