「ねえあかり、今年の夏休みこそ絶対海行こうよ!」
「いいけど、私水着持ってないよ」
「それ、去年もいってた。今年は私が買い物付き合うから、もう断る
口実にはならないからね」
期末テストもどうにか乗り越え、私たちは1学期の終業式を迎えていた。
進学を考えている一人として、遊んでいる場合ではないとわかっている
ものの、どこか浮かれている自分がいることも否定できない。
だって初めての、彼氏がいる夏休み。
「ところで、後ろで聞き耳立ててるヤツらはどうする?」
振り向くと、そこには明らかに右耳をこちらに向けている南と、気に
していない素振りをしながらペンを逆向きに持っている翔平の姿。
ふと1学期初日のことを思い出す。同じ高校に進学したにも関わらず
翔平とはほとんど顔を合わせることのないまま1年を過ごし、同じ
クラスになったときはなんだか気まずくてぎこちなかった。そんな
私たちが3か月後はこんなふうに和やかな時間を過ごしているなんて、
あの頃の私は想像もしていなかった。
「そりゃあ大好きな彼女がナンパとかされないように守らないと、
なあ翔平」
「『大好きな彼女』だって、ごちそうさま」
小さな声で晴夏に耳打ちするとそっちはどうなのよ、と返された。
そのとき、私はあることに気づいた。
(そういえば私、まだ翔平に好きっていってない...?)

