素直になれない私たち


「あの日、一緒に帰ろうと思って放課後翔平のクラスに行ったの。
教室の後ろの出口の前まで行ったら翔平と女の子の声が聞こえて、
中をのぞいたらその子が翔平に抱きついて...キスしてた。それが
河野さんだったんだよね」


翔平は、自分がいおうとしたことを全部いわれた、そんな顔を
していた。


「その後翔平がすぐに口元を手で拭ってるようなしぐさが見えた
から、そこに翔平の意思はないんだろうなって思ったよ。だけど
その頃の私はまだ子供で、どうしてもその時に見た光景が受け入れ
られなくて...翔平の顔をまともに見れなくなっちゃった」


言葉が続かない。でも、ここで黙ってしまったらあの頃の自分と
変わらない。





「あの時ちゃんとどうして?って聞けばよかった」





そういって一度瞬きをした瞬間に瞳に溜まっていた涙が零れ落ちた。
恥ずかしくなって思わず顔を両手で覆った私に、テーブルの向かい
側で黙って話を聞いていた翔平が近づいて、両腕を伸ばして優しく
私の体を抱きしめた。