「駅前のケーキ屋さんの前を通りかかったとき、そんなつもりは
なかったのになぜか立ち止まっちゃったのよ。今思えばこのため
だったのね」
そういってお母さんがどれにする?とケーキの箱を私たちに開いて
見せた。じゃあこれを、と翔平はチーズケーキを指差し、私の分は
私に聞くまでもなくお母さんがイチゴのショートケーキを取り出し
てお皿にのせた。紅茶でいい?といいながら手はすでに紅茶用の
ポットに伸びている。
「...ごめん。うちのお母さん、いつもあんな感じで」
ベッドの手前に置いてあるテーブルを挟んで向かい合う翔平と私。
やっと翔平の口から本音が聞けそうだったのに、美味しそうな
ケーキと紅茶の香りでそれまで感じていた緊張感もすっかり
リセットされてしまった。
「とりあえず、食べよっか」
そういって促すと、翔平もフォークを手に取ってケーキをカットし
食べ始めた。私がケーキの上に乗ったイチゴを一番最初に食べると、
それを見た翔平が少し口元を緩めたように見えた。
「何、どうかした?」
「相変わらずイチゴ好きなんだな」
中3の夏祭りのときもイチゴのかき氷即決だった、と翔平はいった。

