素直になれない私たち


南の晴夏への想いがやっと成就した頃、私たちは手を繋いだまま駅の
方向へ向かって歩いていた。ただ時々驚いたようにこっちを見る人たち
(主に女子)の視線が気になったのか、翔平は途中で一本奥の通りに
入った。私は翔平に手を引かれるままついて行く。


「家まで送ってく」


もう少し他にいうことないのかな、と思いつつひとまず私も『うん』
とだけ返した。電車に乗って3駅、ほんの10分ほどの距離。やはり
翔平は黙ったままで、でも私たちの手も繋がれたまま。


「...どっちだっけ?」


電車を降りて駅の外に出ると、翔平が左右を見渡しながら足を止めた。
こっち、と私が繋いでいる手を引いて翔平を導く。


「そっか、今まで自転車だったからこっちまで来たことないよね」


途中で見覚えのある光景が出てきたらしく、翔平の歩を進める足が
早くなって、いつのまにか私が翔平の手に引かれるように歩いていき、
駅から徒歩5分程のところにある私の家の前まであっという間に着いて
しまった。私は、玄関前で何か言いたげな表情の翔平の口から言葉が
出てくるのを待っていた。


「あかり、俺あの時ー」


「あらーあかり、お友達?」


背後から聞こえた能天気なお母さんの声。振り向くと、まだ繋いだ
ままの手を目ざとく見つけ、お母さんはまるですべてを察したかの
ような顔をして早く家に入りなさい、とあっという間に私と翔平を
家の中に押し込んだ。