「ちょっ、やめてよっ、扉が壊れるっ……!」
「中、入れて」
「もう入ってるじゃん……」
入れて、と言いながらもう完全に玄関内へと入り込んでいて、本当にこの人の神経の図太さには呆れる。
まるで自分の家かのように靴を脱ぎ散らかして部屋へと上がり込む孝治の後ろ姿を見て、私は大きなため息をついた。
諦めて私もその後を追う。
「……また弁当?」
「……悪い?」
「相変わらず料理出来ないのか」
「一か月やそこらで急に出来るようになるんだったら苦労しないわよ……」
「まあそうだよな」
ははは、と馬鹿にしたように笑う孝治に、心底イラッとする。
元からそう言うタイプではあったけど、別れてからそう言う所がどうしても鼻につくと言うか、気に入らないと思ってしまう。
私は食べかけのお弁当にフタをしてテーブルの端に寄せた。
この男にお茶を出す気はない。
出来れば今すぐ帰って欲しい。
「で、話ってなに?」
「まあ、そんなに焦らなくても……」
「は? 私さぁ、見ての通りお昼ご飯の途中なのよ。さっさと話してとっとと帰って欲しいのよね」
「冷たいな」
「は……? なんで別れた男に優しくしなきゃいけないわけ? 優しくして欲しいんなら、もうすぐ奥様になる彼女にでもしてもらえばいいでしょ?」
「……」
どうしてそこで黙るのよ?
もう全部がめんどくさい。
孝治ってこんな男だったっけ……?



