隠れ御曹司の愛に絡めとられて


『……とにかく、会って話したいことがあってさ。仕事はもう落ち着いてるんだろ? て言うか、土日はどうせヒマなんだから、会って話するぐらいいいじゃん!』

「……」


“土日はどうせヒマ”という言葉が癪にさわり、私はムッとして眉間に皺を寄せた。

確かにヒマだけど、それをあんたにとがめられる筋合いはないわよ。

持っていた箸をから揚げにグサリと突き刺す。

……いや、食べ物にあたるのは良くないな、ごめんね私のから揚げさん。


『な、今から行っていい?』

「……よくない」

『て言うか、もう部屋の前』

「……はぁ!?」

『開けて』

「やだっ」

『じゃあ叫ぶ』


ねえなんで!? なんでそうなるの!?


「待って! 分かったから、叫ばないでっ! 近所迷惑っ!」

『じゃあ開けて』

「分かったって言ってるじゃないっ。ちょっと待って、すぐ開けるからっ」


から揚げに突き刺したままのお箸を慌てて置いて、私は玄関へと走る。

お弁当、まだほんの少ししか手をつけていなかったのに……。

げんなりしながら玄関の鍵を開けた。

その音を聞いた孝治が、扉をバッと乱暴に開ける。