お腹の中に入れば問題はない、食べる前に出来る限り元へと戻す作業を開始する。
しっかりと手を合わせて「いただきます」と口ずさんだあと、から揚げへと箸をのばす。
がぶりとかじりついたところで、無粋な音が鳴り響いた。
スマホの画面を確認すると、やっぱり孝治だ。
お行儀はよろしくないけれども咀嚼しながら通話ボタンを選択する。
「……はい」
もぐもぐしながらだからちゃんと“はい”と聞こえたかどうかは微妙だけど、出ただけありがたいと思って欲しい。
『亜矢!? やっと出た!』
なにその恨みがましそうな言いぐさ、むかつく。
言葉にはせず、から揚げと一緒に飲み込む。
「……なに?」
『話がしたい。今からそっち行ってもいいか?』
「は……? いや、ダメに決まってるし」
そもそも朝の電話で“話すことは無い”と言ったはずだし、“来るな”とも言った。
それをまるで聞いていなかったかのような振る舞いに、私は思わずイラッとしてしまった。
「孝治、あの子と結婚するんでしょ? 子供も生まれるんだし、元カノなんかに連絡を取ってるって知られたら怒られるよ?」
怒りを抑えてなるべく冷静に、優しさく相手を諫める。
本当は罵りたいぐらいだけど、こんなことにカロリーを使いたくない、と、カロリーの塊であるから揚げを前にしながら考える。
カロリーは使うよりも摂取したいのよ、お腹空いてるから。



