隠れ御曹司の愛に絡めとられて


「……サイアク」


余計な想像をしてしまって、ムカムカして来てしまった。

もうアイツのことを考えるのはよそう。


スーパーでお昼に食べるお弁当と夜に食べる分のお総菜、ついでに切らしていたビールの6缶パックを買って、ルンルン気分で来た道を戻る。

……と、スーパーを出てすぐにスマホが鳴った。

右手にお弁当とお総菜、左手にビール……、両手がふさがってるから無視しようかな……ビール重いし。

そう思っている間にもけたたましい音が鳴り響き、着信を主張している。

あーあ、バイブだけのマナーモードにしておくべきだった、うるさすぎる。


仕方なく買ったものを全て左手に持ち、ポケットからスマホを取り出した。

発信主は案の定、孝治だ。

電話には出ずに通話を切って、今度こそバイブモードに切り替え、ポケットに放り込む。

あぁ、片手で持ってたから、せっかく買ったお弁当とお総菜が斜めになっておかずが寄ってしまったじゃないの、どうしてくれるのよ?

イラッとしながら自宅へと歩き出す。

ポケットの中でスマホがブルブルし始めたけど、無視だ。

部屋へ着くまでの間も、何度も着信があったけど全部無視した。

だって私のおかずをこれ以上犠牲には出来ないから。

斜めにしてしまったからお弁当のおかずは完全に寄ってしまっていて、さくら漬けとひじきの煮物が混ざり合った状態でから揚げにすっかりまぶされていた。

うわぁ、カオス……。