隠れ御曹司の愛に絡めとられて


平日には出来なかった洗濯やら部屋の掃除なんかをして全てが一段落した頃、お腹がグーと鳴った。

そう言えば朝にバゲットを食べたきりだ。

時計を見ると、時刻は午後2時。

どうりでお腹が空くはずだ。


さて、何を食べよう?

徒歩7分のコンビニで何か買うか、徒歩5分の定食屋へ行くか、お湯を注ぐだけのカップ麺か、それとも……。

思案した結果、一番近い徒歩3分のスーパーでお弁当を買うことに決めた。

コートを羽織り、お財布とスマホをコートのポケットに突っ込む。

そう言えば電源を落としたままだったことを思い出してもう一度スマホを手に取り、電源を入れる。

起動するまで少し時間がかかるので、そのまま再びポケットの中へと放り込んだ。

スニーカーを履いて家を出て、挙動の遅いエレベーターをのんびり待って……いる間にスマホが完全に起動したらしく、ピコン、とメッセージの通知音が鳴った。


「……げっ」


エレベーターに乗り込みながら画面を確認すると、何件もの留守電の通知と、同じく何件ものショートメッセージが入っていて思わず下品な声が出た。

それが全て孝治からのものだったので、ますますげんなりする。

最悪だ。

本当に全てアイツからのものかどうかをしっかり確認してから、通知を全て削除した。

一体いまさら何の用事があると言うんだろう。

振られた側の私がもう一度考え直してって懇願するならともかく、振った側の男が捨てた女に対して何を言うつもり?

お前のメシは不味かった、とか。

お前の迷子癖には辟易だ、とか。

お前の派手な顔はもう見飽きた、とか……?