「……何の用?」
『話があるんだけど』
「ふうん。私は無いんだけど?」
『俺はあるから。今からそっち行っていい?』
「……は? ダメに決まってるでしょ?」
何言ってんの、この男。
ふざけるのも大概にして欲しい。
『じゃあ俺ん家、来る?』
「いや行かないし……」
『……じゃあどこなら会えるんだよ!?』
……は?
この人、何言ってるの? 話、通じてる? 頭、大丈夫?
「どこだろうと会いませんっ。言っておくけど、あんたの物は全部捨てて良いって言われたから本当に処分したからねっ、残ってないから!」
『……いや、そうじゃなくて。話したいことがあるって言ってんじゃん?』
通話相手のこの男、つい最近まで私と付き合っていた、孝治と言う男だ。
そう、浮気した上に私を振ったって言う、あの男。
別れ際に「俺の物は全部捨ててくれて良いから」なんて格好つけたこと言ってたんで、ムカッときて、本当にこの男に関する物は全部捨てた。
お泊まりの時に部屋着として着てたトレーナーはもちろん、もらったプレゼントとかも、全部。
なにひとつ残さず、綺麗さっぱり。
未練なんてない。
残ってるのは、言いようのない虚しさだけだ。



