「……」
しばらく着信画面を見つめて、この電話を取るべきかどうか悩んでしまった。
だって……。
かかってきた番号は私の電話帳には登録していない番号だったから。
いや、正確には、つい一か月ほど前までは登録していた。
けれど、縁が切れたその時に綺麗さっぱり消し去ったのだ。
まあ、相手が私の番号を消していなければこうやってかかってくる可能性はあるんだけどね。
そんな風に思って、相手が私の番号を消していなかった事実に気づいてしまい、思わず眉間に皺が寄った。
どう言うこと? なんで消してないのよ?
そんなことを考えている間もけたたましく音を鳴らし続けているスマホの画面を軽く睨みつけ、私は大きめのため息を一つついて、コールに応じた。
「……はい」
『出るの遅すぎっ』
は? 文句言われる筋合いないし!
そう思い、イラッとして自らの髪をぐしゃりとかき乱した。
「……どちら様?」
『はぁ? 俺だよ、分かってるくせに』
昔ながらのオレオレ詐欺か、さようなら。
と、ここで通話を切ることが出来たらどんなにいいか。