隠れ御曹司の愛に絡めとられて


……なんて思っている場合じゃない。

ちがうちがう、こんなにたくさん貰えないってば。


「で、でもね? さすがにこんなにたくさんは、手に持てないし」

「大丈夫! ちゃんと車で送ります」

「……いや、あの」

「ねえこれ見てっ。これ、絶対に亜矢さんに似合うと思って。一目惚れして買ったんだ」


なんとか阻止する方法は無いものかと考えているうちにも、メープルくんはお土産の説明を再開している。

一目惚れして買ったらしいそれは、とても古い革張りの小箱だ。

彼がそれをパカリと開けると、中には上品なピアスが収められていた。


「アンティークのピアス。亜矢さんに似合うと思う、絶対っ」


やけに自信満々。

まあ……確かにとても良い雰囲気のピアスだけど……、アンティークって、高かったりするんじゃないの?

そんな高価な物はもらえないよ。


「絶対に似合うから、ちょっとあててみて?」

「えっ? あの……っ」


箱から取り上げたピアスを私の耳元にあてると、彼の指が私の耳朶に触れた。

内心どぎまぎしている私を見て、にこにこと満足そうに微笑んでいる。

そのニコニコが、思った通り似合ったからなのか、それとも、私がドキドキしてしまってることを悟ってのことなのか……。

どっちにしたって、ズルい……。