隠れ御曹司の愛に絡めとられて


――部屋に着くなり「ちょっと待っててね」と言われてリビングのソファで大人しく彼を待つ。

彼がどんな仕事をしていてどんな人間なのか分からないし、会うのだってまだ三回目なわけだけど……。

なぜだかこの部屋はとても落ち着く。

インテリアのせいなのかな。

でも私、別にこう言うインテリアが好みだとかそういうわけではないんだけどなぁ。

不思議に思っている間にメープルくんが大きな箱を抱えて戻ってきた。


「ごめんね、お待たせ~」


目の前のローテーブルに置かれた箱の中には色んな物が入っていた。


「まずねぇ、一番のオススメはコレ! パリで買ったチョコレート。いっぱい味見させてもらったけど、本当に美味しかったよ~。それからねぇ、亜矢さんってパン食べる? これ、マロンクリームなんだけど、パンに塗って食べたら美味しいよ~。それからねぇ……」


……と、次から次へと色んな物が出て来る。


「え、ちょ、ちょっと待って!」

「うん……?」

「こ、こんなに……?」

「そうだよ?」

「えっと、どれかひとつで、大丈夫だから」

「……え、無理。だって全部亜矢さんのこと思い浮かべながら買ったもん。亜矢さんがもらってくれなかったら誰ももらい手がないんだけど」

「う……」

「捨てちゃうの、もったいないなぁ……」

「……うぅっ」


悲しそうな顔をするメープルくん。

あ、にこにこじゃない顔……めずらしいかも。

うん、眉尻を下げる顔も、にこにこの次に可愛いね?