半分諦めにも似た気持ちになってきた時、少し強めの風がビューッと吹いた。
風が冷たい。
当たり前だけど、真冬の屋上は予想以上に寒い。
思わず身体に力が入る。
「……寒い?」
「うん、まあ、普通に寒い」
「じゃああと1分だけ」
「1分……」
「うん。その間に亜矢さんを抱き締めてる感触、脳に焼き付けるから」
「……」
はい……!?
もはや言葉にもならなくて、文句を言うのを諦めて、残り1分間は夜景を楽しむことにした。
それなのに……。
「わ。亜矢さんの耳、冷たい」
「……えっ、ちょ……っ」
私の右側の耳が、彼の左頬にギュッと押しつけられている。
はあ……!? どう言うこと!? 何やってんの、この人!?
せっかく夜景を楽しもうと思ったのに、やっぱりそれどころじゃなくなったじゃないのっ。
どうしてくれるの?
「ね、ねえ、ちょっとっ」
「んー? どう? 耳、暖かくなった?」
「そうじゃなくって!」
「うん?」
私の顔を覗き込もうとしたらしい、彼の頬が耳から離れる。
と、途端に右耳に冷たい空気があたり、思わず身震いした。
「分かった。左も、ね?」
「だ、だから、そうじゃなくてっ……」
止める間もなく左耳に彼の頬が押しあてられる。
彼の頬も冷えていたらしく、一瞬だけヒヤッとしたあとすぐにお互いの体温で密着した部分が暖まり始めた。
……人肌ってすごい。



