「……どうしたの? 嬉しそう」
「え……っと、いやあの、東京の夜って案外綺麗だなーって思って」
「夜景、好き?」
「特別好きってわけじゃないけど、今日はなんだかそんな気分……かな」
「そっか、じゃあちょうど良かったかも」
「……え?」
「いまから夜景見に行こうと思って」
「……へえ」
「ちょっと寒いかもだけどねー」
ふむ、夜景を見に行くのか。
それはそれで……まあ、ほんの少し楽しみではある。
そう言えば改めて考えてみると、ドライブと同様にデートで東京の夜景を見たことはないから、それも初めてだ。
なんだか案外何もしたことがないな、と思う。
過去に付き合ってきた男たちと一体どんな風に過ごしていたっけ?
思い出すのも面倒で、私はさっさとこの思考を放棄した。
車をどこかの駐車場に止めて、どこかに歩いて行く。
方向音痴だから、基本的にどこに来ても現在地がどこだか分からない。
どこかの建物に入り、エレベーターで、上へ上へ……。
最終入場時間を過ぎているけれど、どうやら入ることが出来るらしい。
どんな手を使ったのかは聞かない方が良い気がする。



