隠れ御曹司の愛に絡めとられて


オートロックでも何でもないただ重いだけのエントランスの扉を開けると、見覚えのある車が一台止まっている。

メープルくんの車だ。

彼に腕時計を返しに行ったあの日、迷子癖のある私を心配した彼がこのマンションまで車で送ってくれた。

彼が乗っているのはよく街中で見かけるようなコンパクトカー。

別に誰がどんな車に乗っていてもいいとは思うけど、でもなんとなく、彼はもっと派手な車に乗ってるものだとばかり思っていたから、少し驚いた。

だってホストの人ってきっと、偏見かも知れないけど、高級外車に乗ってそうなイメージだし。

私の勝手な想像だけどね。

だから全然違ったことに、正直言って結構びっくりしたのだ。


私を見つけるなり車から降りてきてサッと助手席の扉を開け、どうぞ、と促す。

こうやってエスコートされるのは気分が良いけれど、あまりのスマートさに、やっぱり彼の仕事は……なんて思ってしまう。

そう言う仕事が悪いわけじゃない。

きっとホストを真剣に仕事としている人だっているんだろうとは思う。

思うけど――。


彼は「じゃあ出発しまーす」と明るい声でそう言って、車を滑らかに発進させた。

なぜ急に、ドライブ……? 二週間も連絡なかったのに?

まあ、こっちもしなかったけど。