隠れ御曹司の愛に絡めとられて


『……イヤ?』


彼の言葉を聞くと同時に、悲しそうに眉尻を下げてシュンとしている彼の姿が脳裏に浮かんだ。

飼い犬の方のメープルも、私の体調が悪くて散歩に連れて行ってあげられない時とても悲しそうな表情をしていたっけ……。

もっとも、弟に連れて行ってもらえると分かった途端、ブンブンと激しく尾っぽを振って喜んでいたけれど。


「えっと、……イヤじゃ、ない」


私が行くと言わなければ、もしかすると他の女性を誘ったりするんだろうか。

私に尋ねたのと同じように、可愛い声音で小首を傾げて「イヤ?」なんて聞いたりするんだろうか……。

犬のメープルみたいに、私じゃなくても、誰でも良かったりするんだろうか……。


そんな風に思ってしまって。

そう思った次の瞬間には「イヤじゃない」と返事をしてしまっていた。


……どうかしてる。


五つも年下で、しかもチャラくて、もしかしてホストで……。

全然、私の好みじゃない。

そんな男の誘いに乗るなんて、本当にどうかしてる。

分かってるのに……。


夕飯も済ませて、なんならお風呂も済ませてた。

テレビでニュースでも見ながら適当に時間を潰して、あとは寝るだけ。

そんな状態で、これから外出……?

ほんと、どうかしてる。